景気後退時(リセッション)に強いセクターって何?

リセッションに強いセクターって何??アメリカ株で解説アメリカ株
この記事は約17分で読めます。

2022年7月現在、景気後退局面(リセッション)の兆候が見られています。

アメリカで大規模な金融緩和が終わり、急激な金融引き締めが始まっていますしね。

コロナショック時に従来に無い規模の金融緩和をしたこと、ウイズコロナ時代になりモノが足りなくなりサプライチェーン混乱長期化、ロシアによるウクライナ侵攻などが要因でインフレが加速しています。
景気を落とさずにインフレ退治できるかが焦点となります。

2022年6月10日終了時点為替円USD

今回の投稿では、アメリカを中心に
①リセッションとは?
 過去リセッション時S&P500分析
②リセッションの兆候
③リセッション時に強いセクター探索
④2022年7月時点の状況

⑤リセッションに強いセクターETF上位銘柄
の順で解説しています。

リセッションとは?

定義

景気サイクルは、拡大期と後退期を交互に繰り返します。
リセッションとは

景気の山から谷までの間をリセッションといいます。
基本的には、GDP(国内総生産)が二四半期連続マイナスになるとテクニカルリセッションと言います。

アメリカでは、全米経済研究所(National Bureau of Economic Research)がリセッション判定を実施します。

アメリカの過去リセッション

2020年のコロナショックを除くと、第二次世界大戦後10回リセッション局面がありました。
第二次世界大戦後のアメリカリセッション一覧

トリガーは、戦争、インフレ、金融危機など様々です。
過去10回の平均期間は11.1か月と約1年に亘ります。

リセッション時のS&P500

リセッション時のS&P500について調査しました。

リセッション期間か月株価ピーク最大値株価ボトム最小値
1953年7月1954年5月101953年1月26.661953年9月22.71
1957年8月1958年4月81956年8月49.641957年12月39.38
1960年4月1961年2月101959年8月60.711960年10月52.20
1969年12月1970年11月111968年12月109.371970年7月70.69
1973年11月1975年3月161973年1月121.741974年10月60.96
1980年1月1980年7月61980年2月120.221980年4月98.95
1981年7月1982年12月171980年11月141.961982年8月102.20
1990年7月1991年3月81990年6月368.781990年10月294.51
2001年3月2001年11月82000年3月1552.872002年10月788.90
2007年12月2009年6月182007年10月1576.092009年3月666.79

株価ピークとリセッション開始タイミングのズレ

アメリカリセッション時S&P500株価ピークとリセッションまでの期間ズレ

過去10回ともリセッション判定の1年前以内には株価ピークを迎えています。
平均で7か月前という結果が確認されました。

株価ピークとボトムを付けるまでの期間

アメリカリセッション時S&P500ピークからボトムからボトムまでの期間

株価ピークからボトムを迎えるまでの期間は平均で15.5か月、最長で31か月となっています。つまり、1~3年は我慢が必要だということが分かります。

株価ピークとボトムの下落率

アメリカリセッション時S&P500株価ピークとボトム比

株価ピークとボトムの下落率は、平均-30.8%、最大で-57.7%と暴落しています。
近年は下落幅が大きくなっていることが分かります。

株価ピークを上回るまでの回復に要する期間

アメリカリセッション時S&P500回復期間

前項の下落幅が大きい時ほど、回復する期間が長くなっています。
山高ければ谷深し。となっています。
ばらつきが大きい為、平均は意味を成しませんが計算すると、23か月となっています。
最大で69か月と約6年も回復できていませんでした。
日本はバブル崩壊から30年以上も回復できていませんが・・・

1953年時

アメリカリセッション1953年時

1957年時

アメリカリセッション1957年

1960年時

アメリカリセッション1960年

1969年時

アメリカリセッション1969年

 

1973年時

アメリカリセッション1973年

1980年時

アメリカリセッション1980年

1981年時

アメリカリセッション1981年

1990年時

アメリカリセッション1990年

2001年時

アメリカリセッション2001年

2007年時

アメリカリセッション2007年

リセッション兆候

GDP成長率(四半期)

アメリカ実質GDP成長率

2022年1-3月期GDPは、予想に反してマイナス成長となりました。
4-6月もマイナスになれば、テクニカルリセッションとなります。

ISM製造業景気指数

ISM製造業景気指数

製造業における景況感を示す指標で50より上だと好況、下だと不況となります。
2022年7月現時点は50よりも上ですが、この4か月で3回が予想よりも低い結果が出ており、景気は下を向きつつあることを示唆しています。

アメリカ消費者信頼感指数

アメリカ消費者信頼感指数

消費者マインドが低下してきていることが分かります。

アメリカ消費者物価指数

2022年6月10日終了時点為替円USD

インフレが加速しており、これが消費者マインドを著しく損ねている状態です。

アメリカ長短金利差

債券利回りが逆イールド状態になると、リセッションの兆候であると言われています。
短期よりも長期の方がリスクプレミアムが付くため、通常は長期の方が金利が高い状態となります。

アメリカ債券利回り10年と2年の差

2年と10年金利の差が2022年に入り、4月、7月にマイナスとなり、逆イールド状態が出現しました。

アメリカ雇用統計と失業率

2022年6月アメリカ雇用統計

2022年6月アメリカ失業率

2022年7月時点では、強い労働市場となっています。

以上のことから、リセッションになる兆候はありますが、労働市場は強い為、リセッションにならないかも?と言われてもいます。ただ備えは必要だと思いますので、リセッションに強いセクターは何なのか?を過去2回分のリセッションから調査しました。

リセッションに強いセクター探索

SPDRシリーズで有名なステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)が作ったセクターETFから分析しました。

ETF一覧

名称ティッカーインデックス名開始日
エネルギー・セレクト・セクター SPDR® ファンドXLEEnergy Select Sector Index1998年12月16日
テクノロジー・セレクト・セクター SPDR® ファンドXLKTechnology Select Sector Index1998年12月16日
ヘルスケア・セレクト・セクター SPDR® ファンドXLVHealth Care Select Sector Index1998年12月16日
一般消費財セレクト・セクター SPDR® ファンドXLYConsumer Discretionary Select Sector Index1998年12月16日
公益事業セレクト・セクター SPDR® ファンドXLUUtilities Select Sector Index1998年12月16日
生活必需品セレクト・セクター SPDR® ファンドXLPConsumer Staples Select Sector Index1998年12月16日
素材セレクト・セクター SPDR® ファンドXLBMaterials Select Sector Index1998年12月16日
資本財セレクト・セクター SPDR® ファンドXLIIndustrial Select Sector Index1998年12月16日
金融セレクト・セクター SPDR® ファンドXLFFinancial Select Sector Index1998年12月16日
不動産セレクト・セクター SPDR® ファンドXLREReal Estate Select Sector Index2015年10月7日
コミュニケーション・サービス・セレクト・セクター SPDR® ファンドXLCCommunication Services Select Sector Index2018年6月18日

不動産ETF、コミュニケーションサービスETFは、設定日が2015年以降であり、
今回調査をした2001年、2007年時のリセッションには無いETFであるため、調査からは省いています。

2001年3月リセッション

S&P500ETF SPYと各ETFの比較

2001年リセッション時セクター別成績

●ピーク
 ・SPYは2000年3月。リセッションから12か月前がピークでした。
 ・先行指数は素材株であり、最も早くピークを迎えました。
 ・テクノロジー、ヘルスケア、一般消費財は、SPYとほぼ同タイミングでした。
 ・公共事業、生活必需品、資本財、金融は遅れてピークを迎えています。
●ボトム
 ・SPYは2002年10月にボトムを迎えました。ピークから31か月目でした。
 ・ヘルスケア、一般消費財が最も早くボトムを迎え回復に向かいました。
 ・生活必需品が最も遅くボトムを迎えました。

騰落率推移

SPYピークが2000年3月。
1年前の1999年3月をスタート(0%)とし、そこからの騰落率を測定しました。
2001年リセッション時セクター騰落率
・XLK(テクノロジー)が暴騰したあと暴落したことが分かります。
 →ドットコムバブルと呼ばれるように、テクノロジー新興企業が暴騰暴落しました。
・XLP(生活必需品)、XLF(金融)はスタートからマイナスが続きました。

ピーク/ボトム下落率比較

・SPYピーク:2000年3月、ボトム:2002年10月
 →リセッション期間中(下図の青グラフ)
・リセッション前後の各セクターピークとボトムの比(下図のオレンジ)

2001年リセッション時セクター下落率

・下落率はXLK(テクノロジー)が最も悪い結果でした。
下落率が「マシ」なものはXLV(ヘルスケア)、XLY(一般消費財)、
 XLP(生活必需品)でした。

2007年12月リセッション

S&P500ETF SPYと各ETFの比較

2007年リセッション時セクター成績

●ピーク
 ・SPYは2007年10月。リセッションから2か月前がピークでした。
 ・先行指数は金融株であり、最も早くピークを迎えました。
  その後一般消費財と続いています。
 ・テクノロジー、ヘルスケア、公共事業、資本財は、SPYとほぼ同タイミングでした。
 ・エネルギー、素材、生活必需品は遅れてピークを迎えています。
●ボトム
 ・テクノロジーが最も早くボトムを迎えました。
  しかしながら、ピーク自体が前回リセッションのピークを超えていない状態でした。
 ・他の指数はすべてSPYと同じタイミングでボトムを迎えました。

騰落率推移

SPYピークが2007年10月。
1年前の2006年10月をスタート(0%)とし、そこからの騰落率を測定しました。
2007年リセッション時セクター騰落率
・XLF(金融)が-83%と大暴落しました。
 そして2008年9月にリーマンブラザーズの破綻=リーマンショックとなりました。
・XLE(エネルギー)、XLB(素材)がピーク上昇率が高い結果でした。
・XLP(生活必需品)が最も下落率が低い結果でした。

ピーク/ボトム下落率比較

・SPYピーク:2007年10月、ボトム:2009年3月
 →リセッション期間中(下図の青グラフ)
・リセッション前後の各セクターピークとボトムの比(下図のオレンジ)

2007年12月リセッション時セクター下落率

・XLF(金融)が最も悪い結果でした。
・XLV(ヘルスケア)、XLU(公共事業)、XLP(生活必需品)が「マシ」な結果でした

ボトムから直近ピークを超えた期間

ピーク時株価を回復する期間を測定しました。(ボトムからの期日)

2001年、2007年リセッション時ボトムから直近ピークを回復する期間

下落率が高かった
 ・2001年:XLK(テクノロジー)
 ・2007年:XLF(金融)
は、回復までの期間がそれぞれ184か月、129か月とかなり多くの期間が必要となりました。
回復に要する期間が最も短かったセクターはXLY(一般消費財)でした。
2つのリセッション時に28か月で回復しました。

セクターまとめ

●下落率が低い:ヘルスケア、生活必需品
●下落率が高いセクターは回復しにくい
●エネルギーが他セクターと比べて最もピークを付けるのが遅い
 ※一番遅効性があるセクター
●回復に要する期間が短いセクター:一般消費財

2022年7月現在の状況

2022年7月8日終了時点の株価を基に算出しました。

2022年7月8日終了時点セクターETF騰落率

・SPYのピークは2022年1月。現時点のボトムは2022年6月。
・ピーク先行指数はXLC(コミュニケーションサービス)の2021年9月。
・XLV(ヘルスケア)、XLU(公共事業)、XLP(生活必需品)がピークを付けたのが
 2022年4月と遅く、下落率が最も低い。
 ヘルスケア、生活必需品がやはり堅い
XLE(エネルギー)がピークを付けるのが最も遅い
下落率が高い:XLY(一般消費財)、XLC(コミュニケーションサービス)、
 XLK(テクノロジー)

リセッション時に強いセクターの主要銘柄

これまでの2回の結果から現在の状況は似ている部分が多いことが分かります。
下落率が低く、堅調なヘルスケアと生活必需品セクターETF中の主要銘柄を調査しました。

また、過去2回のリセッションにおいて回復までの期間が最も早いものが一般消費財セクターであったため、現在の下落率は高いですが、追加で調査しています。

XLV(ヘルスケア)主要銘柄

銘柄名Ticker組入比率
ユナイテッドヘルスUNH9.86
ジョンソンエンドジョンソンJNJ9.51
ファイザーPFE6.04
アッヴィABBV5.47
イーライリリーLLY5.28
メルクMRK4.75
サーモフィッシャーTMO4.39
アボットラボラトリーズABT3.88
ダナハーDHR3.46
ブリストルマイヤーズBMY3.25

上位10銘柄で55.89%、上位5銘柄で36.16%となっています。
世界的にも超大手企業がずらりと並んでいます。

2022/7/8までの成績

会社名ティッカー3か月6か月1年年初来
ユナイテッドヘルスUNH-2.47%5.91%26.51%3.28%
ジョンソンエンドジョンソンJNJ-2.17%3.52%5.44%4.21%
ファイザーPFE0.57%-4.42%35.46%-9.96%
アッヴィABBV-9.51%12.50%31.37%12.89%
イーライリリーLLY8.05%26.79%39.37%19.64%
メルクMRK9.19%17.62%18.77%21.06%
サーモフィッシャーTMO-5.74%-10.48%6.77%-17.01%
アボットラボラトリーズABT-8.90%-19.16%-8.39%-22.37%
ダナハーDHR-8.84%-13.61%-4.77%-19.83%
ブリストルマイヤーズBMY0.05%21.27%13.03%20.90%
構成上位銘柄の調子が良いことが分かります。
特にイーライリリー、メルクが好調です。
またTOP10位の中では下位ですが、ブリストルマイヤーズも非常に強い結果です。
S&P500が低迷している中、これだけプラスだと心強いです

XLP(生活必需品)主要銘柄

銘柄名Ticker組入比率業種
P&GPG15.41家庭用品
コカ・コーラKO10.91飲料
ペプシコPEP10.52飲料
コストコCOST9.84食品・生活必需品小売
ウォルマートWMT4.54食品・生活必需品小売
モンデリーズMDLZ4.40食品
フィリップモリスPM4.04タバコ
アルトリアMO3.83タバコ
コルゲートパルモリーブCL3.34家庭用品
エスティローダEL2.97パーソナル用品

日本でもお馴染みの銘柄が数多く並んでいます。
上位10銘柄で69.81%、上位5銘柄で51.23%と偏りが大きいことが分かります。

2022/7/8までの成績

会社名ティッカー3か月6か月1年年初来
P&GPG-7.53%-11.69%5.87%-11.35%
コカ・コーラKO0.06%3.87%16.65%6.64%
ペプシコPEP-0.30%-1.12%14.69%-1.05%
コストコCOST-14.24%-8.80%23.18%11.65%
ウォルマートWMT-19.09%-12.87%-10.17%-13.33%
モンデリーズMDLZ-1.22%-7.37%-0.81%-5.84%
フィリップモリスPM-5.18%-2.15%-4.55%-1.17%
アルトリアMO-22.87%-14.64%-10.58%-12.39%
コルゲートパルモリーブCL-0.58%-8.06%-4.85%-8.19%
エスティローダEL-5.01%-29.38%-19.80%-32.07%
全体的にはイマイチな結果となっています。
コカ・コーラが全区間でプラスと健闘していることが分かります。

 

XLY(一般消費財)主要銘柄

銘柄名Ticker組入比率業種
アマゾンAMZN23.23インターネット販売・通信販売
テスラTSLA18.81自動車
ホームデポHD8.82専門小売り
マクドナルドMCD4.38ホテル・レストラン・レジャー
ナイキNKE4.19繊維・アパレル・贅沢品
ロウズカンパニーLOW3.68専門小売り
スターバックスSBUX2.78ホテル・レストラン・レジャー
ブッキングホールディングスBKNG2.20ホテル・レストラン・レジャー
TJX TJX2.12専門小売り
ターゲットTGT2.10複合小売り

日本でもお馴染みの銘柄が数多く並んでいます。
上位10銘柄で72.30%、上位5銘柄で59.42%とこちらも偏りが大きくなっています。
アマゾンとテスラがずば抜けており、グロース要素が高い為、今回の暴落相場で大きく下がっています。

2022/7/8までの成績

会社ティッカー3か月6か月1年年初来
アマゾンAMZN-27.22%-29.70%-38.07%-30.70%
テスラTSLA-28.06%-30.86%15.24%-28.81%
ホームデポHD-4.04%-29.66%-10.07%-30.97%
マクドナルドMCD0.71%-5.22%8.76%-5.53%
ナイキNKE-15.92%-33.48%-32.81%-35.24%
ロウズカンパニーLOW-9.48%-28.70%-5.79%-29.73%
スターバックスSBUX-4.89%-28.21%-31.65%-32.22%
ブッキングホールディングスBKNG-20.37%-26.68%-18.23%-26.25%
TJX TJX-2.63%-21.56%-11.86%-22.37%
ターゲットTGT-31.47%-35.34%-40.47%-36.06%
暴落していることが良く分かります。
その中でマクドナルドは生活必需品に近い側面もあり、比較的健闘していることが分かります。

 

まとめ

第二次世界大戦以降のアメリカにおいてのリセッションはコロナショックを除いて10回ありました。
その中で過去10回ともリセッション判定の1年前以内には株価ピークを迎えています。
ピークを上回るのはボトムを付けてから最大で約6年かかったこともあり、ピークからの下落幅が大きいものほど回復するまでの期間が長いことが確認できました。

●下落幅が小さいセクター
 ヘルスケア、生活必需品

●ピークを回復するまでの期間が短いセクター
 一般消費財

が直近2回のリセッションから確認できました。

2022年7月現在の状況は、ヘルスケア、生活必需品、公共事業の下落率が低いことから、過去と類推できる内容となっています。実際にヘルスケアの大手株は2022年もプラスになっているところも多く、底堅い結果が得られています。

現在の状況下では、バリュー株の中でもヘルスケア、一般消費財セクターが良さそうです。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました